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大分地方裁判所中津支部 昭和62年(ヨ)7号 決定 1988年8月19日

債権者

坂井洋右

右代理人弁護士

柴田圭一

債務者

扇城自動車株式会社

右代表者代表取締役

加来康男

右代理人弁護士

永野周志

主文

一  債権者が債務者の従業員である地位にあることを仮に定める。

二  債務者は、債権者に対し、昭和六二年二月二三日から本案判決確定に至るまで一か月金一七万七六八九円の割合の金員を仮に支払え。

三  申請費用は債務者の負担とする。

理由

第一申立

一  債権者

主文同旨

二  債務者

1  債権者の申請を却下する。

2  申請費用は債権者の負担とする。

第二当裁判所の判断

一  債務者は、肩書地に本社を置き、営業所を中津市万田、同市大貞及び同市今津に置いて、タクシー小型車四七台及びタクシー大型車二台を所有して一般乗用旅客自動車運送(いわゆるタクシー業)等を営んでいる株式会社であること、債権者は、昭和四五年五月頃債務者にタクシー運転手として雇用され、以来勤続してきたところ、昭和六二年二月二三日債務者から別紙一のとおりの懲戒解雇通告書を手渡された(以下「本件懲戒解雇」という。)こと、債権者は、債務者から、昭和六二年二月二二日までの賃金は支給されたが、以後の賃金は支給されていないこと、以上の事実は当事者間に争いがない。

二  債務者が主張する本件懲戒解雇の事由は、別紙二のとおりである(その内容は、運転日報不記載の点を加えているほか、別紙一の懲戒解雇通告書とは異る部分がある。)。なお、債務者は、料金の不法領得の事実をもって解雇事由と主張しているものではなく、また、客に対する料金面での過剰サービスまで解雇事由として主張しているものではない(但し、解雇事由(5)の後段を除く。)。

さて、懲戒解雇の事由となる事実の立証責任は、使用者にあるものと解するのが相当である。これを本件についてみると、債務者は、別紙二「解雇事由」の(1)、(2)の<1>、<2>、(3)ないし(6)、(7)の<1>、<2>、(8)、(9)の<1>又は<2>、(10)ないし(15)計一八回の運行区間(その特定は始期と終期の時刻によることとなる。以下、この一八回の運行区間を「本件各係争運行区間」といい、この一八回の運行区間の属する各仕業日を「本件各係争仕業日」という。)について、債権者が客から料金を収受した事実を疎明しなければならない。

ところで、本件各疎明資料及び審尋の全趣旨(以下、これを合わせて「本件記録」という。)によれば、本件各係争仕業日において債権者が乗務したタクシーに備え付けられていたタコグラフメーターの各タコグラフチャート紙の乗車記録(最外縁部の記録線)中の本件各係争運行区間に該当する凸状態(別の表現をすれば山型)の部分(以下、「本件各係争凸状態」という。)について、対応日の各運転日報の対応個所にその運行の記載がない事実が認められる。右事実に照らすと、債権者が本件各係争運行区間において、客を乗車させながら、故意に料金メーターを倒さずに走行し、区間相当の料金を客から収受しながら、これを運転日報に故意に記載せず、右収受料金を債務者に納入しなかったのではないかとの疑を懐くことは一応もっともである。

そこで、本件記録に照らして、以下検討する。

1  先ず、債務者は、本件各係争仕業日において、債権者が乗務していたタクシーに備え付けられたタコグラフメーターと料金メーターとはすべて連動していた旨主張し、これに対して債権者は、すべて連動していなかった旨主張するので、検討する。

以下の事実は、当事者間に争いがない。すなわち、料金メーターを倒さずに(スイッチを空走にした状態)運行する場合には、連動、非連動いずれの場合でも、客席(後部、左右助手席)の負荷の有無のみによってタコグラフチャート紙の運行記録の凸、凹を生ずる。しかし、料金メーターを倒して(スイッチを賃走、割増、支払のいずれかに入れた状態)運行する場合には、凹状態から凸状態への変化は、客席に負荷が加わることのみによっても生ずるし、料金メーターを倒すことのみによっても生ずるが、凸状態から凹状態への変化は、客席の負荷が消滅すること及び料金メーターを起こすこと(スイッチを空走にすること)の二要件がともに実現しなければ生じない(但し、負荷の重量、その各客席別の相違については争いがある。)。

さて、(証拠略)は、右債務者の主張に正しく副うものである。

しかしながら、

イ 次のAないしE各運行(時刻は運転日報の記載による。)については、当該運転日報に「(W)」の記載があり、これ以外の本件各仕業日の運転日報には「(W)」の記載がない。これは往復を意味するものであって、もし客が目的地で一旦料金を支払った場合には、たといその客が復路も乗車してもこの記号は使わなかったものと認められる。

A 昭和六一年三月二五日一三時一五分から一四時二〇分までS(W)洞門間の運行(疎乙第八号証の一)

B 同年六月一三日一五時一五分から一五時三〇分までS(W)沖台間の運行(疎乙第一三号証の一)

C 同年七月一〇日八時三五分から八時五〇分まで片(W)中殿間の運行(疎乙第一四号証の一)

D 同年九月一一日一〇時二五分から一一時二五分まで市役(W)田尻間の運行(疎乙第一八号証の一)

E 同年一〇月五日九時四五分から九時五五分まで新地(W)トヨダ間の運行(疎乙第二〇号証の一)

Aの運行は、運転日報に「(メーター無し)」の記載があり、これは料金メーターを倒さない運行であったと認められるから、検討の対象外とする。

Bの運行は、対応するタコグラフチャート紙(疎乙第一三号証の二、三)によれば、一五時一六分から一五時三〇分までの約五・五キロメートル(往復合計)の運行であったと認められ、中津駅南口と中津市沖代町間の往復実走距離として不自然がなく、また、料金額としても不自然がないところ、その運行記録には、該当凸状態の中央部に線状の凹状態が認められる。

Cの運行は、対応するタコグラフチャート紙(疎乙第一四号証の二、三)によれば、八時三九分から八時四四分までの約二キロメートルの運行と八時四六分から八時五一分までの約二キロメートルの運行であったと認められ、右の各距離は中津市片端町から同市中殿までの片道実走距離として不自然がなく、また、料金額としても不自然がないところ、その運行記録には、右両運行の凸状態の中間に若干幅のある凹状態が認められる。

Dの運行は、対応するタコグラフチャート紙(疎乙第一八号証の二、三)によれば、一〇時三二分から一〇時四五分までの約七・八キロメートルの運行と一一時一七分から一一時二九分までの約六キロメートルの運行であったと認められ、右の各距離は、中津市役所から中津市田尻までの実走距離として不自然がなく(往路と帰路で経路が異る場合がありうるし、帰路の終着地点が往路の始発地点と異ることもありうる。)、また、料金額としても不自然がないところ、その運行記録には、右両運行の凸状態の中間に大幅な凹状態が認められる。

Eの運行は、対応するタコグラフチャート紙(疎乙第二〇号証の二、三)及び審尋の全趣旨(昭和六三年八月五日の審尋調書)によれば、一〇時〇〇分から一〇時一〇分までの約二・六キロメートルの運行と一〇時二三分から一〇時三〇分までの約二・二キロメートルの運行であったと認められ(運転日報とタコグラフチャート紙との間で、時刻に大幅なずれが認められるが、凸状態の順序及びそれ以降の運行に照らすとこのように認定することができる。)、右の各距離は、中津市の北新地又は南新地と同市豊田町との実走距離として最短距離ではないが不自然がなく(往路と帰路で経路や交通渋滞の状況が異る場合があることは当然である。)、また料金額にも不自然がないところ、その運行記録には右両運行の凸状態の中間に大幅な凹状態が認められる。

右の各(W)の記載は、連動、非連動が争いの的となることなど夢想だにしなかった当時にしたことであるから、作為的に虚偽の記載がなされたおそれは全くないといえる。次に、往復の客の場合、目的地に到着したときは、料金メーターを倒したままにして定められた待料金を自動的に加算するのが正規の料金計算方法であって、もしこのとき料金メーターを起こすと、客に不利になる場合がある。また、待料金をサービスしようとするならば料金メーターを支払にしておけば済むことである。従って、右各中間の凹状態は、非連動であったならば当然のことであるが、連動であったとするならば説明し難い事実である。もとより、例外的には、一旦料金を支払って下車する往復客もあろう。その際、例外的に記載方法を誤って「(W)」の記号を使うこともありえないことではないとしても、「(W)」の記載があるすべての運行(検討対象外のAを除く。)においてそのような客で、かつ、そのような誤記であったということは稀有の事例であるというべきである。

ロ 資料上鮮明に読み取れるもののみを取り上げるが、次のFないしPの各運行(時刻はタコグラフチャート紙の表示による。)は、運転日報及びタコグラフチャート紙の瞬間速度記録に照していずれも客を乗車させて走行して料金を収受した運行と認められるところ、当該タコグラフチャート紙の運行記録の凸状態の中に、一本又は複数の線状の凹状態が混入している。

これは、客が極く短時間下車した場合又は乗車中の客が座席を変えるときや、外部をのぞくときや、後部座席から助手席の荷物を取るときなどに腰を浮かせた場合などに生ずる現象であると認められる。

F 昭和六一年一月一五日一四時四九分から一四時五九分までの運行(疎乙第五号証の二、三)

G 同日一八時二五分から一八時三七分までの運行(右同証)

H 同年三月一三日二一時〇一分から二一時二六分までの運行(疎乙第六号証の二、三)

I 同年六月一日一二時四七分から一二時五二分までの運行(疎乙第一二号証の二、三)

J 同年六月一三日一八時五九分から一九時一五分までの運行(疎乙第一三号証の二、三)

K 同年七月一六日一五時一五分から一五時二九分までの運行(疎乙第一六号証の二、三)

L 同年七月二二日一一時三二分から一一時三七分までの運行(疎乙第一七号証の二、三)

M 同年九月一一日一四時二四分から一四時三八分までの運行(疎乙第一八号証の二、三)

N 同年九月二三日一七時〇三分から一七時一六分までの運行(疎乙第一九号証の二、三)

O 同年一〇月五日一七時〇五分から一七時一一分までの運行(疎乙第二〇号証の二、三)

P 同年一〇月六日一三時四九分から一四時〇三分までの運行(疎乙第二一号証の二、三)

右各現象は、非連動の場合には当然のことである。しかし、連動していた場合には問題である。すなわち、右各運行記録の凸状態のうちの初期附近又は終期附近に線状の凹状態が現われているときには、発車しても料金メーターを倒すのを後らせた場合又は目的地に到着する前に料金メーターを起こした場合もありうると説明することができるが、凸状態の中央部又はかなり深い部分に線状の凹状態がある場合(特に、H、I、Lの場合)には、対応する運転日報記載の料金額と対比して、説明が困難である。もっとも、当該線状の凹状態の個所で料金メーターを倒していなかったということが絶対にありえないことではないけれども、稀有の事例であるというべきである。運転日報の記載に不正確さがあることは、後記2で説示するとおりである。

右イ、ロで認定した客観的事実及びそれについての検討の結果を総合すると、本件各係争仕業日において債権者が乗務したタクシーのシートスイッチと料金メーターとが連動していたとする前掲(証拠略)の記載内容は信用することができず、他に右連動についての債務者の主張事実を疎明するに足りる資料はなく、これについての債務者の主張は疎明なきに帰し、かえって、債権者の主張するとおり連動していなかった事実の疎明があったものと判断する。

2  そこで、以下、シートスイッチと料金メーターとが連動していなかった事実を前提として、本件各係争凸状態について、本件記録及び公知の経験則に照らして検討する。

(タコグラフメーターについて)

イ 本件係争凸状態をその手前又はその次の凸状態と区別するものは、いうまでもなくその間に挟まれた凹状態の記録である。この凹状態は、通常は前の客から料金を収受し、料金メーターを起こし(スイッチを空車にし)て、走行または停車している状態である。しかしながら、この凹状態の記録は、客が途中で所用を達するため一旦下車した場合、往復の客が目的地に到着して所用を達している場合、忘れ物をした客が一旦戻って家の中にそれを取りに入っている場合、客が途中で下車して空車のまま別の場所に回送するように注文した場合(客はその間徒歩で所用を達する場合もあろうし、回送場所でその客の家族などが入れ替って乗る場合もあろう。)などでも発生することがある。もとより、このような場合、料金の支払はなく、再び乗車して完全に乗車目的を達してからその際の料金メーターが表示する料金が支払われることになり、運転日報の記載も前後を合わせて一回の運行とされることになる。

そうすると、同一客を乗せた一連の運行に凸状態が一個とは限られず、本件係争凸状態の手前の凸状態と合わせて一連の運行となることもあるし、その次の凸状態と合わせて一連の運行となることもあるし、例外的には三個以上の凸状態を合わせて一連の運行となることもある。

ロ ところで、凸状態の幅は所要時間を表わすもので、その間の走行距離は最内縁部の走行距離記録が表示しているところ、料金メーターが表示する料金額は、必ずしも走行距離と比例しない。なぜならば、料金メーターは、初乗り分が定額であるほか、時速九キロメートルを超える速度で進行している場合は距離のみに基づいて作動し、時速九キロメートル以下で進行している場合には距離と時間の併用に基づいて作動し、停止している場合は時間のみに基づいて作動するからである。従って、例えば、途中における交通渋滞の程度、道路工事の有無、他車の交通事故現場への遭遇等々で同じ走行経路でもメーター料金にはかなりの差異があり、特に交通渋滞の程度は、時刻、曜日によりかなりの相異を来すものである。

従って、後日、問題のある区間を実走してテストしても過去のある時点における正当なメーター表示は必ずしも明らかにならない。

ハ 債権者を含めてタクシーの運転手は、客に対して料金面でのサービスをすることがある。例えば、客を乗せて発車しても、やむなく一旦逆方向に進行して適当な空地のあるところまで行って、そこで方向転換をし再び乗車位置に戻るまでの区間は料金メーターを倒さないこともあろうし、逆方向に進行しなくても客の歓心を買うためにしばらくは料金メーターを倒さないこともある。また、途中で客が一時下車する場合、料金メーターを支払にして時間料金をサービスする場合もある。また、客が的確に目的地を告げたにもかかわらず、運転手が不注意でそこを通り過ぎてしまったため逆戻りする場合や運転手の地理不案内から著しい遠回りをしてしまった場合などは目的地点到着前に料金メーターを起こすこともある。また、特に好意の持てる客や同情すべき客の場合にも料金メーターを遅く倒したり、早く起こすことがある。

ニ タコグラフメーター及びタコグラフチャート紙の記録には、程度は明らかではないが誤差を伴う。

また、債権者が乗務したタクシーのタコグラフメーターが故障したままの状態で取り付けられていた疑がある。また、全期間中か否かは不明であるが、右タコグラフメーターのシートスイッチの感度が後部席左、同右、助手席でそれぞれ相違していた疑がある。もし、そのようなことがあったとすれば、客が席を変えた場合、複数の客の一部が途中で下車した場合、途中で客の家族や連れの者が新たに乗り込んできた場合には、運行記録の凹凸が生ずることになる。

ホ シートスイッチは床の負荷に対しては作動しない。従って、客が重い荷物を床の上に置き忘れて下車した場合、運転手がそれを座席上に乗せて客のもとに届けるために走行した場合、新たな凸状態を生ずることになる(この場合は連動していても同じである。)。

(運転日報について)

ヘ 運転手は、客を最終目的地で下車させた直後に運転日報を記載する場合ももちろんあるが、出発前に記載する場合もあるし、途中で、信号待ち、渋滞停止等の機会を捕えて記載する場合もある。後二者の場合は、運転日報に記載する時までに客が告げていた目的地を到着地の欄に記載することになる。しかし、その後において、客が目的地をその先にまで延長することもあるし短縮して途中で下車することもあるし、新たな立寄り地を注文することもあるし、忘れ物で逆戻りすることもあるが、これらの変更に伴う運転日報の記載の訂正、追加をしないことがある。

また、記載を忘れたために、他の客を数回乗車させた後に記載する場合もあるし、当日の勤務を終えて帰社した後に記載する場合もある。特に、帰社した後に当日の料金メーターの累計値により算出した金額と運転日報の料金の累計額との相異を指摘された後に思い出して記載する場合もある。右のような場合、記載する順序は、真実の運行順序と異なる場合が生ずることは当然である。

ト 運転日報の発車地、到着地の欄に記載する地名は、正確な住居表示によることもあるが、通称による場合もあり、その通称の中には、住居表示の町名を複数包含する広域的なものもある。また、住居表示上の正式の名称でもこれを通称としてさらに広域的に使用する場合もある。

チ 発車時刻欄、到着時刻欄は、おおむね五分刻みで記載しているが、発車時刻を事後における推測で記載することもあるし、到着時刻を事前に推測で記入することもある。タコグラフメーターに取付けてある時計が毎日絶対正確に調整されていたという疎明もない。

リ 備考欄の記載が、タコグラフチャート紙の運行記録を意識して、あらゆる例外的運行について万全に記載されていたならば、本件のような紛争は防止されたかもしれないが現実には、ほとんどすべてが空欄のままであり、現在において、これを格別非難する事由もない。

(その他について)

ヌ 債務者は、債権者が乗務したタクシーの昭和六一年一月から一一月までの一一か月間にわたるタコグラフチャート紙を解析の対象にしたが、解雇事由とした凸状態は一八回分である。債権者の勤務状況は、二日出勤、一日休みを繰り返していた。従って、約二二〇日の実勤務であって、その間において問題となったのがこの程度の回数であるということは、それが例外的な事象の発生であるとみることが十分可能である。

ル 債権者が債務者から本件についての事情聴取をされたのは昭和六二年二月であって、類型的な勤務を繰り返している債権者としては、そのころになってからでは、本件各係争運行区間について具体的に弁明することは極めて困難であるといえる。

ヲ 仮に客を乗せながら、料金メーターを倒さず運行して、客から料金を収受した場合、安い料金で乗ることができたであろうと思って喜ぶ客もあろうが、正当な料金額が不明の状態で料金の請求を受けることに不快感を懐く客もあろう。後者の客は、本社に苦情を申出ることも予想されるところ、審尋の全趣旨に照してそのような苦情申出はなかったものと認められる。

以上イないしヲの検討結果を総合して本件記録に照らすと本件各係争区間については、それぞれ次のとおりであった蓋然性が最も大であると認められる。しかし、それ以外の場合であった可能性がないということもできない。いずれにしても、債権者が本件各係争運行区間において客から料金を収受した事実の疎明は、本件全記録に照らしてもすべてないものと判断する。従って、故意による運転日報不記載の点は判断するまでもない。

(解雇事由(1)、(2)の<1>の各運行)

いずれも、係争運行区間とその手前の運行区間とが同一客の運行であった。

(解雇事由(2)の<2>の運行)

係争運行区間分の料金については、客からこれを収受した後、当日の運転日報の最終回の欄にこれを記載し、全額債務者に納入した。

(解雇事由(3)、(4)の各運行)

いずれも、係争運行区間とその手前の運行区間とが同一客の運行であった。

(解雇事由(5)、(6)、(7)の<1>の各運行)

いずれも、係争運行区間とその次の運行区間とが同一客の運行であった。

(解雇事由(7)の<2>の運行)

係争運行区間とその手前の運行区間とが同一客の運行であった。

(解雇事由(8)の運行)

係争運行区間の記載が当日の運転日報にないが、この料金は債務者に納入済みである。

(解雇事由(9)の<1>の運行)

係争運行区間とその次の運行区間とが同一の客の運行であった。

(解雇事由(9)の<2>、(10)ないし(15)の各運行)

いずれも、係争運行区間とその手前の運行区間が同一客の運行であった。

3  解雇事由(5)の後段について検討する。

昭和六一年四月二一日の一七時五八分から一八時九分までの運行及び一八時二八分から一八時三七分までの運行は同一客の運行であって、その正規の料金は待時間料金まで含めて二二五〇円であったにもかかわらず、債権者は料金メーターを遅く倒すか早く起こすなどの方法で八一〇円の料金しか客から収受しなかった事実(疎乙第一〇号証の一ないし三)並びにその理由は、この客が、債権者の母親の近所に住む人であって、債権者の母親が病気となり債権者の姉方に引き取られていたとき、債権者の母を見舞うために客の自宅から債権者の姉方まで往復乗車した客であった事実及び債権者はその客から知らされて始めて母の病気を知ることができた事実(債権者は、その客の運行を済ませた後、直ちに早退して母の見舞に行った。)(昭和六二年五月一一日付債権者準備書面添付の比較一覧表の昭和六一年四月二一日分、昭和六三年二月二五日付債権者準備書面)が認められる。

右事実は、債権者が私情に駆られて客から収受すべき料金のうち一四四〇円分を債務者に無断で収受せず、もって同額の損害を債務者に与えたことになるが、右のような事情の下において右の程度の損害を与えた場合、この事実のみをもって懲戒解雇をすることは、その余の点(債務者が、全従業員に対し、いわゆる料金面でのサービスをどの程度承認ないし黙認していたか、本件労働契約関係において債務者側に非難されるべき行為がなかったかなど。)について検討するまでもなく、懲戒権の濫用であって許されないものと解する。

以上により、債務者が主張する解雇事由は、すべて理由がないこととなった。

三  本件記録によれば、債権者は、債務者から、昭和六一年中に総額金二一三万二二七九円の給料の支払を受けた事実(月平均額は金一七万七六八九円となる。)が認められる。

よって、債権者の被保全権利についての主張はすべて理由がある。

四  債権者が、債務者から昭和六二年二月二三日分以降の給料の支払いを受けていない事実は、当事者間に争いがない。本件記録によれば、債権者は、本件懲戒解雇の通告書を手渡されて以来現在に至るまで、他に就職することなく引続き無職である事実が認められる。

ところで、本件記録によれば、債権者は、本件懲戒解雇の一八日後に建築確認申請をして、総工費一〇九六万一四五〇円をもって自宅の改築工事を行ない、その工費のために住宅金融公庫から一〇六〇万円の借入れを行った事実が認められる。右事実に照らすと、債権者の家計にはかなりの程度余裕があるものといえるけれども、通常の仮払仮処分事件ならばいざ知らず、本件は、仮処分事件の審尋のみで実に一年五か月を要したものであって、この後に控える本案事件が確定するに至るまでの期間はどれ程長期化するか予測し難い。従って、右の事実から推認できる程度の余裕では、債権者がその間の生活を維持できると認めることはできない。その他、本件記録を総合して、本件仮処分の必要性の疎明はあるものと判断する。

五  よって、債権者の本件仮処分申請は、すべて理由があるからこれを認容することとし、申請費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して債権者に保証を立てさせることなしに、主文のとおり決定する。

(裁判官 山口久夫)

別紙一 懲戒解雇通告書

貴殿の左記行為は、当社就業規則第八九条(懲戒解雇)一三項・一四項・二〇項・二七項・五〇項に該当するので、同条項及び同規則第七九条(懲戒の種類、方法及び決定)の九を適用し、昭和六二年二月二三日付をもって懲戒解雇(即時)致します。

貴殿は、

一 昭和六一年一月一五日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、一七回と一八回目の間に、運行時間は同仕業の二四時五五分一〇秒より、二四時五七分〇七秒迄の一分五七秒、運行距離で、一、一キロメートルの間を、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金四九〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

二 昭和六一年三月一三日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、一回と二回目の間に、運行時間は、同日の八時五八分二五秒より九時〇三分五五秒迄の五分三〇秒、運行距離で、二、一キロメートルを、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金四九〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

三 昭和六一年三月二一日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、一六回と一七回目の間に、運行時間は、同日の一九時三四分三五秒より、一九時四四分二五秒迄の九分五〇秒、運行距離で、五、一キロメートルを、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金一、〇五〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

四 昭和六一年三月二五日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、七回と八回目の間に、運行時間は、一一時一八分四五秒より一一時二四分一〇秒迄の五分二五秒、運行距離で、二、六キロメートルを、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金四九〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

五 昭和六一年四月三日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、一一回と一二回目の間に、運行時間は、同仕業の二四時五六分二〇秒より二四時五九分五〇秒迄の三分三〇秒、運行距離で、二、四キロメートルの間をタクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金五七〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

六 昭和六一年四月二一日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、五回と六回目の間に、運行時間は、同日の一七時五八分二五秒より一八時〇八分四五秒迄の一〇分二〇秒、運行距離で、四、八キロメートルの間をタクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金八一〇円也を会社に納入しなかった

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

七 昭和六一年五月二日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、四回と五回目の間に、運行時間は、同日の一一時四四分五一秒より一一時四八分三五秒迄の三分四四秒、運行距離で、一、三キロメートルの間を、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金四一〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

八 昭和六一年六月一日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、八回と九回目の間に、運行時間は、同日の一七時三〇分三〇秒より一七時三三分四五秒迄の三分一五秒、運行距離で、一、四キロメートルの間を、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金四一〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

九 昭和六一年六月一三日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、一一回と一二回目の間に、運行時間は、一七時一八分〇〇秒より一七時二二分二五秒迄の四分二五秒、運行距離で、一、六キロメートルの間を、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金四一〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

一〇 昭和六一年七月一〇日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、一三回と一四回目の間に、運行時間は同日の一三時二七分〇五秒より一三時三二分〇秒迄の四分五五秒、運行距離で、二、六キロメートルの間を、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金五七〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

一一 昭和六一年七月一三日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、一七回と一八回目の間に、運行時間は同日二一時二五分〇秒より二一時三〇分〇五秒迄の五分〇五秒、運行距離で、一、八キロメートルの間を、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金四一〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

一二 昭和六一年七月一六日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、六回と七回目の運行の間に、運行時間は、同日の一一時〇分三五秒より一一時〇三分五五秒迄の三分二〇秒、運行距離で、〇、五キロメートルの間を、次に同運転日報の運行順位では、九回と一〇回目の運行の間に、運行時間は、同日の一二時五七分二五秒より一三時〇一分三〇秒迄の四分〇五秒運行距離で、二、四キロメートルの間を、更に、同運転日報の運行順位では、一五回と一六回目の間に、運行時間は、同日の一八時〇五分一五秒より一八時〇八分二〇秒迄の三分〇五秒、運行距離で、一、一キロメートルの間を、夫々タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、夫々の料金、四一〇円也、同五七〇円也及び同四一〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)は、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

一三 昭和六一年七月二二日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、一回と二回目の運行の間に、運行時間は、同日の七時三一分四〇秒より七時三五分三〇秒迄の三分五〇秒、運行距離で、一、九キロメートルの間を、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金四九〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

一四 昭和六一年九月一一日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、七回と八回目の運行の間に、運行時間は、同日一五時四八分一〇秒より一五時五二分二〇秒迄の四分一〇秒、運行距離で、二、一キロメートルの間を、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金五七〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

一五 昭和六一年九月二三日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、六回と七回目の間に、運行時間は、同日の一一時〇九分四〇秒より一一時一四分五五秒迄の五分一五秒、運行距離で、一、八キロメートルの間を、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金四九〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

一六 昭和六一年一〇月五日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、二回と三回目の間に、運行時間は、同日の一〇時三一分二〇秒より一〇時三六分五五秒迄の五分三五秒、運行距離で、一、八キロメートルの間を、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金四九〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

一七 昭和六一年一〇月六日仕業の勤務において、貴殿の作成に係る運転日報の運行順位では、九回と一〇回目の間に、運行時間は、二〇時〇六分三〇秒より二〇時〇九分五五秒迄の三分二五秒、運行距離で、一、四キロメートルの間を、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、料金四一〇円也を会社に納入しなかった。

同行為(不作為)により、当社に運賃収入上、右相当額の損害を与えた。

ところで、当社は、一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー業)を営む会社であり、事業の経営は、専ら、貴殿等タクシー乗務員の稼働によって収受する運賃のみを唯一の収入源として運営を計っているものであるから、実車運行に当っては、必ずタクシー・メーターを倒し、適正な運賃を収受の上、その全額を会社に納入しなければ企業は存続し得るものではない。

然るに、貴殿は、前記の通り、昭和六一年一月一五日より同年一〇月六日までに一九回に亘って、タクシー・メーターを倒さず実車で運行し、合計一三、三四〇円相当のタクシー料金を会社に納入せず、当社に運賃収入上、右同額の損害を与えた。

右一連の行為及び同結果は、夫々本通知書前文摘示の条項に該当するところ、同行為は、前記の通り企業の存立を、危殆におとしいれる何ものでもなく、斯くては雇用契約上の前提をなす相互の信頼を破壊し、従って貴殿に今後就業を継続させることは出来ないので、頭書の措置をとるものである。

別紙二 解雇事由

(1) 債権者は、昭和六一年一月一五日仕業の勤務において、債権者作成の運転日報の運行順位の一七回と一八回との間に、運行時間で二四時五五分一〇秒より二四時五七分〇七秒までの一分五七秒運行距離で一・一キロメートルの間をタクシーメーターを倒さずに実車で走行し、その運行区間の乗車料金四一〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運行収を記入し、

(2) 債務者は、昭和六一年三月一三日仕業の勤務において、

<1> 債権者作成の運転日報の運行順位の五回と六回との間に、運行時間で一一時二〇分より一一時三〇分までの一〇分、運行距離で八・五キロメートルの間をタクシーメーターを倒さずに実車で走行し、その運行区間の乗車料金一、六一〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

<2> 債権者作成の運転日報の運行順位の一回と二回との間に、運行時間で八時五八分二五秒より九時〇三分五五秒までの五分三〇秒、運行距離で二・一キロメートルの間を実車で走行したが、その運行区間の乗車料金四九〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

(3) 債権者は、昭和六一年三月二五日仕業の勤務において、債権者作成の運転日報の運行順位の七回と八回との間に、運行時間で一一時一八分四五秒より一一時二四分一〇秒までの五分二五秒、運行距離で二・五キロメートルの間をタクシーメーターを倒さずに実車で走行し、その運行区間の乗車料金六五〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

(4) 債権者は、昭和六一年四月三日仕業の勤務において、債権者作成の運転日報の運行順位の一一回と一二回との間に、運行時間で二四時五六分二〇秒より二四時五九分五〇秒までの三分三〇秒、運行距離で二・四キロメートルの間をタクシーメーターを倒さずに実車で走行し、その運行区間の乗車料金六五〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

(5) 債権者は、昭和六一年四月二一日仕業の勤務において、

債権者作成の運転日報の運行順位の五回と六回との間に、運行時間で一七時五八分二五秒より一八時〇八分四五秒までの一〇分二〇秒、運行距離で四・八キロメートルの間をタクシーメーターを倒さずに実車で走行し、その運行区間の乗車料金九七〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

また、仮に、右の事実が認められなかったとしても、債権者作成の運転日報の運行順位の六回の運行について乗客より受領すべき乗車料金が金二、二五〇円であるにもかかわらず、債務者会社の承認を受けることなく無断でその乗車料金を金八一〇円であると値引きし、

(6) 債権者は、昭和六一年五月二日仕業の勤務において、債権者作成の運転日報の運行順位の七回と八回との間に、運行時間で一二時四二分二〇秒より一二時四三分三七秒までの一分一七秒、運行距離で〇・六キロメートルの間をタクシーメーターを倒さずに実車で走行し、その運行区間の乗車料金四一〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

(7) 債務者は、昭和六一年六月一日仕業の勤務において、

<1> 債権者作成の運転日報の運行順位の七回と八回との間に、運行時間で一七時一九分三五秒より一七時二八分二五秒までの八分五〇秒、運行距離で四・二キロメートルの間をタクシーメーターを倒さずに実車で走行し、その運行区間の乗車料金八九〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

<2> 債権者作成の運転日報の運行順位の一六回と一七回との間に運行時間で二二時二四分より二二時二九分までの五分、運行距離で二・四キロメートルの間をタクシーメーターを倒さずに実車で走行し、その運行区間の乗車料金六五〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

(8) 債権者は、昭和六一年六月一三日仕業の勤務において、債権者作成の運転日報の運行順位の一一回と一二回との間に、運行時間で一七時一八分〇〇秒より一七時二二分二五秒までの四分二五秒運行距離で一・六キロメートルの間を実車で走行したが、その運行区間の乗車料金八九〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

(9) 債権者は、昭和六一年七月一〇日仕業の勤務において、

<1> 債権者作成の運転日報の運行順位の七回と八回との間に、運行時間で九時三〇分より九時四〇分までの一〇分、運行距離で五・〇キロメートルの間をタクシーメーターを倒さずに実車で走行し、その運行区間の乗車料金一、〇五〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与えたか、

<2> 若しくは、債権者作成の運転日報の運行順位の一三回と一四回との間に、運行時間で一三時二七分〇五秒より一三時三一分〇〇秒までの四分五五秒、運行距離で二・六キロメートルの間をタクシーメーターを倒さずに実車で走行し、その運行区間の乗車料金六五〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

かつ、前記運行のいずれかを行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

(10) 債権者は、昭和六一年七月一六日仕業の勤務において、債権者作成の運転日報の運行順位の一〇回と一二回との間に、運行時間で一三時四二分より一三時四九分までの五分、運行距離で三・五キロメートルの間を実車で走行したが、その運行区間の乗車料金八一〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

(11) 債権者は、昭和六一年七月二二日仕業の勤務において、債権者作成の運転日報の運行順位の一回と二回との間に、運行時間で七時三一分四〇秒より七時三五分三〇秒までの三分五〇秒、運行距離で一・九キロメートルの間を実車で走行したが、その運行区間の乗車料金四九〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

(12) 債権者は、昭和六一年九月一一日仕業の勤務において、債権者作成の運転日報の運行順位の七回と八回との間に、運行時間で一五時四八分一〇秒より一五時五二分二〇秒までの四分一〇秒、運行距離で二・一キロメートルの間を実車で走行したが、その運行区間の乗車料金五七〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

(13) 債権者は、昭和六一年九月二三日仕業の勤務において、債権者作成の運転日報の運行順位の五回と六回との間に、運行時間で一一時〇〇分三〇秒より一一時〇六分〇五秒までの三分三〇秒、運行距離で一・四キロメートルの間を実車で走行したが、その運行区間の乗車料金四一〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

(14) 債権者は、昭和六一年一〇月五日仕業の勤務において、債権者作成の運転日報の運行順位の一回と二回との間に、運行時間で一〇時二三分三〇秒より一〇時二九分四〇秒までの六分一〇秒、運行距離で二・三キロメートルの間を実車で走行したが、その運行区間の乗車料金五七〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

(15) 債権者は、昭和六一年一〇月六日仕業の勤務において、債権者作成の運転日報の運行順位の九回と一〇回との間に、運行時間で二〇時〇六分三〇秒より二〇時〇九分五五秒までの三分二五秒、運行距離で一・四キロメートルの間を実車で走行したが、その運行区間の乗車料金四一〇円を会社に納入せず、このため前記金額相当額の損害を債務者に与え、

かつ、前記運行を行ったにもかかわらず運転日報にはその旨の記載を行わず故意に虚偽の運収を記入し、

たものである。

前記記載の債権者の各行為は、就業規則第八九条第一三項、一四項、二七項および五〇項に該当するものである。

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